2009-07-09

今まさにこれを 17













島本理生『リトル・バイ・リトル』

清い 淡い ちょっとした夕方の匂い
高校生にそっと耳打ちされたような気分
なんだか久しぶりな感覚にどぎまぎしました

作家の川上弘美さんが以前、自分のすきな小説には食べ物の描写が多い、
といったことをどこかで書いてたのをふと思い出したんだけど、
この話の中にも印象的に食物が登場してくるなあと思った

コートのポケットに入ってた裸のサンドウィッチ
駅前の和菓子屋さんでたくさん買った芋ようかん
習字の先生の昼食の、ワラに包まれた高価な納豆

食べる状況や相手も含めて、そのセレクトが、
たとえ唐突でも、いや唐突だからこそ?
現実世界に対して妙に説得力ある

あとこの話は始まって終わるんじゃなくて、
途中の、ある状態を、こちらが垣間見た、ようで
まだどこかで続いてるんだろうなあこの生活はと 感じた

洗い立てのシャツのような爽やかさ さらっとしてます

島本理生
1983年東京生まれ。作家。人とのふれあいの中で、わずかずつ輪郭を帯びてゆく青春を描いた本作『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を史上最年少の20歳で受賞。