2010-10-25

透明な透明 [作品解説]



今回の作品をつくるにあたって思ってたことを
珍しく丁寧に書いてみようかと思います。
主に演出ノートより。


『透明な透明』

ただ そこにある 光景。
見えているもの。触れられないもの。映画の向こう。
淡々としている。淡々と、そこに居る。
にじむようで、溶けるようで、 覚えられない。

改めて、それそのものを見る。美しい光景がただ目の前を流れている。
映画や写真のように何かフィルターひとつ隔てた向こう側にある。
少し距離感がある。

空気、ニュートラル。
踊る女の子たちがそこに居る。
それをレンズ越し、或いはスクリーン上、な感じで眺めてて欲しい。

なんとなくイメージの参考にしたのは

Cat Power の森の中でギターを弾いてるビデオ
ローザスが森の中で踊ってる映像
是枝裕和監督の「幻の光」の構図の発想
市橋織江が撮影した「ホノカアボーイ」のカメラワーク
とか。

直接は関係ないけど。
遠景の構図、客観的な目線、ゆっくりとした時間の過ごし方、
雰囲気といった部分を、イメージの説明するときに例に挙げました。


タイトル。
透明な透明
clear clears

形容詞+名詞ですが
同じ言葉を敢えて二回繰り返してることにかけて
今回はデュオシーンをたくさんつくりました。
1人でもできるけど、2人でやってみるということ。

透明と云う言葉自体には実はそんなにこだわってないです。
へんに何かに染まりたくない、染めたくない、無色で、
そのままであって欲しい、といった気持ちを込めて使いました。

ちなみに他のタイトル候補で有力だったのが
『覚えられない』
でした。
なんか曖昧なシーンをたくさんつくりたかったので。
でもちょっと否定的ともとれるし言葉のインパクトが強すぎるかなと思って
先に思いついた方に決めました。




Ka na ta のお洋服。

デザイナーのてっちゃんの話を聞いて面白いなーと思った3点。

・着る人の個性を表現する服にしたくない。例えばこれを着るとパンクっぽい、とか、これを着ると強い女性を表現できる、とかいうふうに服で具体性をあおりたくない。その人の身体を1番純粋な状態にしてあげたい。

・前、後ろ、という二方向の概念だけで作ってない。全方位から見られる服を。その証拠にカナタの服の脇にはラインが入ってない。

・何でカナタの服はボリュームが多いのか。それは一歩前にある身体を意識してるから。つまり、静止してるトルソーをモデルにしてなくて、動く身体を前提に作ってるから。

そういう気持ちでつくってる、ということを聞けたのはすごく刺激的で、これらの話も意識しながら振り付けました。


asuna の音楽。

実は以前横浜トリエンナーレで踊った時、ラストに彼の曲を使ったのです。そこから交流がちょっとあって。
ライブも大量のオモチャをがちゃがちゃさせてる姿が面白くて、前から興味のあるミュージシャンのひとりでした。
嵐くんのつくる音楽は、振り幅がかなり大きくて、静と動をはらむ感じが面白いと思っています。

今回、シーンのつなぎ目をあんまりはっきり見せたくないというか
ストーリーとして展開するわけではなく いくつもいくつも断片的なんだけど、
全体がにじんだ水彩画みたいに重なり合いたいと思っていて。

嵐くんに頼んだら 見事に音の移ろいをきれいにぼやかして繋げて、
なんと40分弱のこの作品に対して 全部で通しで1曲にしてくれました。

素晴らしく美しくて、流していた映写機の8ミリ映像との相性も抜群でした。
踊る私たちにとっては緊張の糸がずっと張った状態でしたが、それもなかなかいい空気だったと思います。


ダンサーたち。

今年から自分のカンパニー名をつけて「ホナガヨウコ企画」としてやるのは既に4回目。
その4作品すべてに出てくれてる女の子達。どんどん魅力的になっていく皆が可愛くて仕方ないです。

ソロシーンがそれぞれありましたが、あれはほぼ言葉の振付のみで、ポイントでこういう動きが欲しい/こういうイメージとこういう流れで/この辺使って/といったことしか指示してません。皆が自由に即興で動いてる感じが欲しかったので、私含め4人ともそれぞれ個性的な場面になりました。

みさとちゃんのガツガツと弾けて暴れる突発さ、
さきちゃんのピュアな表情と無邪気な楽しげな快活な動き、
ゆかさんの見とれるような美しい動きの運び、

といったうちがそれぞれに対して いいな と思ってる部分を出してもらいました。

ちなみに私のソロは 何も考えずに脈略なく踊る でした。




シーンづくりについて。

大きくわけて3つの場面を設定してました。

1 断片的な具体的なドラマ。でも展開しない。
2 ただ美しいだけの映画。遠景。ゆっくり。儚い物憂い。
3 私たち。笑い。クラスの女子の技。体操。リズム隊。

最終的には全体的になじませたから、あんまり区分がないように見えたと思います。


照明のアイカワさん。

いつもコンテンポラリーダンス系の明かりや ソウルの劇団の照明(!)を良くやっているベテランさん。
に初めて照明プランニングからやってもらっちゃいました。
別のカンパニーでやってるのを見たことがあるのですが、
繊細でふわ、とした明かりの移ろいが印象的で、
この作品に合うんじゃないかなと思ってお声かけしました。

よくこういった劇場でない変わった小さなスペースでもやってるというだけあって、
すごく少ない機材と照明環境がそんなに整っていない条件の中でのあのクオリティ!
イメージ通りで期待以上の結果と、優しい人柄と信頼の置ける仕事ぶりに終始安心感があり、
アイカワさんに頼んでみて良かった!とほんとにしみじみ思いました。


スペース、Mと。

Mは去年ぐらいからできた新しいスペースで、基本的にはバーで、ギャラリーやイベントとしても使える場所。
通常はバーカウンター前の広い長方形の部分をステージとして使うことが多いらしいのですが、
反対側の小さなスペースの方が ガラス戸やテラス、段やドア、窓 といった色んな遊べそうな要素があったので、
見学に行った時に既に 場所を活かしたことしようーと思って何をどう使うか決めてました。
私は 部屋の中で遊ぶ、というイメージが好きなので 既にある空間とどう仲良くなるかということを大事にしています。

そちらのエリアを舞台として使うのはMとしても初めてだそうで 色々驚かれましたが、
スタッフの皆さんすぐに柔軟に対応して下さって感謝でした。
お客さんには「あのセットは今回の為につくったの?」とか「演劇っぽいセットですね」とか言われました。
へんな空間で面白かったなあ。



何はともあれ 無事に終わりました。よかったよかった。楽しかったね。




長くなりましたが、こんなところかな。
舞台を観た友達によく「ホナちゃんの頭の中を見てみたい」と言われ
うちもよく作品について思ってる事とか長く書きたいなとは思ってて
試しに書いてみました。

それにしても書ききれない。
まあ全部言葉で言えちゃったら舞台の意味ないからね。
みんなが感じた事を そのまま胸にしまってね。